乳がんの母を生きる 乳がんの手術を受けたお母さんとその子どもたち
巻頭にあたり
乳がんは、手術、抗癌剤、ホルモン療法など、様々な治療方法を組み合わせて治療を進めていく疾患です。私たち医療者は、患者さんがその人らしく生きるために、生活や仕事などにあわせて治療が選択できることを心がけています。つまり、高い治療効果を求めると同時に、治療後の生活の質を保つことが重要であると考えているからです。
乳がん患者さんがその人らしく生きていくためには、患者さんだけでなく、そのご家族のサポートも大切だと考えています。乳がんの治療は、長期にわたることも多く、長い治療期間を支えてくれる身近な存在が、とても重要となってくるためです。私たち医療者は、医師、看護師、薬剤師など、多くの職種が一つのチームとなり、患者さんとそのご家族を、多角的な側面からとらえ、支援していくことを目標とし、日々の診療を行っています。
今回は、小さいお子さんを持つ乳がん患者さんとその家族を中心に、貴重なご意見をいただきました。ふだん医療者には言い難いことも、正直に語っていただいたと思います。
ここにおさめたエピソードは、それぞれのご家庭の一例ですが、お読みくださる方のなにかのヒントになればと思います。
乳腺治療・再建センター
センター長 平川 久
乳房再建を希望する理由は様々です。「子供と一緒にお風呂に入った時に、子供を怖がらせたくない、心配させたくない」という思いから再建手術を希望される方も多くいらっしゃいます。乳癌の手術とは違い、再建の手術は時期を選ぶことができますが、皆さん子供の受験や学校行事を避けて手術を予約されます。闘病中も母親業をしっかり続ける姿勢には頭が下がる思いです。
乳輪乳頭の形成も済んだ頃には、再建した乳房を抵抗なくお子さんに見せられるようになっているようです。「子供に再建した乳房を褒められた」「子供が再建乳房を意識せず、自然に接してくれた」と笑顔で患者さんに言ってもらえるのが、形成外科医として一番の喜びです。
乳腺治療・再建センター
副センター長 清野 広人
東北公済病院は年々増加傾向にある乳がんの患者さんの検診も含め、診断から治療までの一連の経過を、乳腺外科医・形成外科医を中心として、チーム医療としてのサービスを提供し、患者さんの気持ちに寄り添った安全、安心な医療と看護を目指しております。
患者さん個々は、今まで何気なく過ごされていた日常生活が、「乳がん」と診断された時から一変して、様々な思いでお過ごしになっておられるかと思われます。患者さんは現実を受け止めると同時に、『家族にどう伝えよう』特に小さいお子さんをお持ちの方は『子どもにどう伝えよう』と瞬時に様々な事を思いめぐらせています。そのように突然の現状にどうして良いか、誰に相談して良いか、他の皆さんはどうしているのだろうかと悩まれておられる声を沢山伺います。
このたび、東北公済病院 乳腺治療・再建センターで手術を受けられた方々に、ご理解とご協力を得て、お子さんへ病気を伝えた体験談をお話しして頂きました。その内容を『乳がんの母を生きる 乳がんの手術を受けたお母さんとその子どもたち』というタイトルで冊子にしました。これから手術を受けられる予定で、お子さんに病気のことを伝えようと考えている方、あるいは伝えたけれどその後どうしたら良いか不安に思われている方々の一助になれればと思い作成しました。お一人お一人の患者さんの状況にあわせた最善のサポートを私たち医療者も学ばせて頂き、一緒により良い方法を考えていきたいと思っております。そして私たちは大事なお子さんの心のケアもお手伝いさせて頂きます。
患者さんが安全に治療を受けながら、患者さんやご家族の方が安心して日常生活を過ごして頂けるよう、医療チーム全員でサポートさせて頂きます。どうぞお一人で抱え込まず 『お母さんとして生きる』 皆さんの身近なサポーターとして私たち医療者をご活用頂ければ幸いです。
師長 岡本 真紀子
乳がんの母を生きる
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(幼児期 一人)
(幼児期、学童期 二人)
(学童期、思春期、青年期 三人)
(学童期 一人)
(幼児期、学童期 三人)
(学童期 二人)
(幼児期、学童期、思春期、青年期 四人)