当科では、良性疾患に対して可能な限り内視鏡手術を行うようにしております。
婦人科領域の内視鏡手術には主に腹腔鏡、子宮鏡手術があります。
内視鏡手術とはカメラを腹腔内あるいは子宮内に挿入しモニターに術野を映しながら手術操作を行う手術です(図1)。
当科の手術件数は以下の通りです(図2)。


内視鏡手術風景
婦人科にける腹腔鏡手術件数(2009年度〜2013年度)

1) 腹腔鏡手術
 お腹に3~4か所の5~12mmの創をあけて行う手術です。主に臍上、左右下腹部、正中(図3)となります。腹腔内に炭酸ガスを注入して視野を確保する気腹法と呼ばれる方法で行っています。利点としては、創が小さいので術後の痛みが開腹手術に比較して少なく、美容的に優れており、術後の回復が早いため入院期間が短縮でき、社会復帰が早いことがあります。その他には腹腔内の癒着が開腹手術に比べると起こりにくいため術後の妊孕性を維持できるといったことが挙げられます。


創の位置

2) 子宮鏡手術
 子宮腔内に還流液を注入し、子宮内腔を拡張して手術を行います。膣から操作するため基本的には手術創は残りません。主に子宮粘膜下筋腫や子宮内膜ポリープが対象となります。


当院で主に内視鏡で治療している疾患


1) 子宮筋腫、子宮腺筋症
 未婚、あるいは妊娠を希望されていて子宮温存希望の方には、子宮筋腫のみを摘出する子宮筋腫核出術を施行します。子宮筋腫のサイズが5~6cm以上であり、過多月経、それに伴う貧血が生じている場合、不妊症の原因となっていると考えられる場合に手術の適応となります。妊娠希望の無い方には子宮全摘術を施行しますが、その際、異常がなければ卵巣は温存します。


①腹腔鏡下子宮筋腫核出術
 子宮筋腫の摘出、体外への回収、子宮創部の縫合という手術操作を全て腹腔鏡下で施行します。やはり開腹手術と比較して美容面、術後の回復の早さ、術後の癒着が発生しにくく、術後の妊孕性の維持などの点で有利であると考えられています。比較的高度な技術を要するため医療施設ごとに手術適応が若干異なりますが、当院では子宮筋腫のサイズが10cm前後まで、個数は3個位までを手術適応としておりますが、子宮筋腫の位置によっても手術適応は異なりますので詳しくは外来でご相談ください。


②全腹腔鏡下子宮全摘術

 今後の妊娠を希望されていない方には、外来での相談後に子宮のみを全摘する手術を施行致します。子宮筋腫、子宮腺筋症の大きさなどの手術条件が整えば、腹腔鏡下に子宮全摘術を行います。開腹手術と比較して、特に術後の回復、社会復帰の早さなどの点でメリットが大きいとされています。これまでは開腹手術でしか行えなかった経腟分娩経験のない方、帝王切開などの手術後の方も腹腔鏡下手術の適応になることもありますので詳しくは外来でご相談ください。卵巣は異常が無ければ温存され、卵巣からの女性ホルモン分泌は維持されるため、手術後に月経は無くなりますが、更年期障害にはなりません。


2) 良性卵巣腫瘍/子宮内膜症性嚢胞(卵巣チョコレート嚢胞)
 卵巣から発生する腫瘍にはさまざまなものがありますが、そのうち術前診断で良性であると考えられるものは基本的に腹腔鏡手術の適応があります。当院で手術の件数が多いものは皮様嚢腫と子宮内膜症性嚢胞である卵巣チョコレート嚢腫です。大きくなると卵巣がねじれたり(茎捻転)、嚢腫の内容が流出したり(破裂)、卵巣チョコレート嚢腫では悪性になること(癌化)があるので手術を選択します。未婚の方、妊娠を希望されている方は、患側の卵巣も出来るだけ正常部分を温存します。


3) 子宮外妊娠(異所性妊娠)
 子宮外妊娠とは子宮の内腔以外に受精卵が着床することをいいます。着床する部位によって卵管妊娠、卵巣妊娠、腹膜妊娠といいます。最も頻度が高いのが卵管妊娠です。そのため、当院の子宮外妊娠の手術で一番多く行われているのが腹腔鏡下卵管摘出術です。子宮外妊娠でもお腹の中に多量に出血してショックになっているような場合は開腹手術で行うことがあります。